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ブッダ Buddha

私が手塚治虫のブッダを知ったのは大学時代で、火の鳥(A4版の単行本)を読み終わり、同じくA4版のブッダの単行本が書店に置かれるようになったころです。ウィキペディア(2014.5.26現在)によると、ブッダは、潮出版社の少年漫画雑誌「希望の友」(後に「少年ワールド」→「コミックトム」と改題)に、1972年から1983年まで連載された、とありますから、1980年ごろだと思います。
その後、ブッダは私の父親が読み、母親が読み、妻が読み、そして3人の子が読み、、、という具合です。

目次



【第1部】
第1章 バラモン

プロローグとして、バラモンによる差別の発生とバラモンの堕落、人々が新しい教えを待ちのぞんでいることが語られる。
——吹雪の中で行き倒れになった僧を、熊とウサギと狐が発見し、熊は魚を、狐は木の実を僧に与えるが、ウサギは何も持ってくることができなかったので、みずからを火の中に投じて僧に与え、神となって天にのぼった。
アシタの師ゴシャラは、この体験によって悟りをひらいた。
アシタは弟子のナラダッタに、ウサギが自分で身を焼いたナゾがとける偉大な人を探してくるよう命じた。ナラダッタは街へいき、タッタの噂を聞く。
チャプラはおとくいにとどける反物をタッタにとられ、とり返してこなければ母を売ると言われる。チャプラの話を聞いたタッタは、母を助けてやろうといった。

第2章 浮浪児タッタ

タッタはトラにのりうつってチャプラの母を助けた。そこへコーサラ国の兵隊がやってきて、タッタの村は兵隊に焼かれ、タッタの母と姉は焼け死んでしまった。
タッタは将軍ブダイを襲うがとらえられ、ナラダッタはタッタをかばっていっしょに処刑されることになる。

第3章 ブダイ将軍

タッタらが処刑されようとしたとき、イナゴの大群が襲来し、すべてを食い尽くした。チャプラと母はタッタとナラダッタを救い出す。
チャプラはタッタを馬にのりうつらせて、軍隊のところへ行き、ワニに襲われたブダイを助けた。ブダイはチャプラを息子にすると言う。

第4章 告知

カピラヴァストウの城では、スッドーダナ王が出陣の用意をしていた。そこへ敵将のブダイがワニに襲われて重傷を負い、そのうえイナゴの大群が敵軍の兵糧を食べつくしたため撤退したとの知らせがもたらされる。
ふしぎなできごとがつづいていた。スッドーダナ王は、それが王妃のおなかの中の赤ん坊にかかわりがあるように思えてならなかった。

第5章 チャプラ

コーサラ国の王はカピラヴァストゥへの攻撃を中止した。
ブダイは、チャプラがスードラだったことを知る。
チャプラの母とナラダッタ、タッタの三人は、コーサラ国へ向かう。途中、ヘビからタマゴをもらうかわりに、タッタが犠牲となってヘビの口の中に入った。そのとき、ナラダッタはアシタの語った話の意味を悟った。
そこへ一本の矢が飛んできてヘビの頭を射抜いた。

第6章 王杯

矢を射たのはバンダカだった。彼はチャプラと勝負をしに行くところだった。
コーサラ国で弓の試合が行われた。チャプラは試合に勝ち、勇士の称号を与えられ、王杯を手にした。

第7章 生誕

スッドーダナ王の妃マーヤは、お産のためにコーリヤ国へ里帰りする途中で赤ん坊を産み落とした。マーヤ夫人は生まれた子に「シッダルタ」という名をつけた。

第8章 技競べ

バンダカはチャプラとの弓の技くらべで卑怯な手を使ってチャプラに瀕死の重傷を負わせた。

第9章 秘薬を求めて

チャプラは重傷だった。ナラダッタはアシタ聖者なら命を救う秘法を知っているといい、アシタへの手紙を書いて、タッタに託した。
タッタはまず馬にのりうつり、馬がバンダカに射られて倒れると、バンダカの馬にのりうつってヒマラヤへたどりつくが、アシタがカピラヴァストウへいっていると聞いて、カモにのりうつり、カモがワシに襲われるとワシにのりうつった。

第10章 予言

カピラヴァストウの城へアシタがやってきて、シッダルタを抱き上げて涙を流し、「この子が育って偉大な人になる頃には、わしはもう死んでおるだろう……それが見られないとは残念でな……」といった。
そこへ、ワシが手紙をくわえて飛び込んでくると息絶えた。アシタはナラダッタが動物たちを殺した罰として、畜生道に落とした。

第11章 裁きの日

ブダイはチャプラの母を殺すよう命ずる。チャプラは母とともに裁きを受け、「かあさんといっしょに死ぬ」と叫ぶ。

第12章 死の壁

タッタは先回りしてふたりを助けようとするが、兵士の投げた槍がふたりをつらぬき、ふたりは死んだ。タッタはコーサラ国への復讐を誓った。

【第2部】
第1章 王子

10年の年月がたった。成人したタッタは、カピラヴァストウの城にむかった。
シッダルタは遊びには興味を示さず、人に身分の差があることに疑問をいだき、「死」について考えるこどもだった。
コーサラ国からきたバラモンはシッダルタに「あした庭園へきなされ。そこでなんでも質問に答えてしんぜよう。あなただけにな」という。

第2章 瞑想の園

バンダカはシッダルタに弓を教え、庭園でシカやサルを射てみせる。シッダルタはバンダカをねらい「殺されるものの気持ちになってほしかったんです」という。
シッダルタは謎のバラモンのところへ行き、「死ぬって どんな感じなの?」と問う。バラモンはシッダルタに死の瞬間を味わわせ、シッダルタに「世界じゅうの人間に人間の生きる道を教えなさい」という。

第3章 奔流

タッタはシッダルタを城から誘い出し、船にのせて下流へと下っていった。
盗賊団が襲ってきたがワニに襲われた。シッダルタは盗賊団の首領が女だと知って、タッタに助けさせる。首領がアリの巣に落ちると、シッダルタはタッタに首領を救い出させた。女はミゲーラと名のった。
捨てられたおばあさんの死を見て、シッダルタは城に帰りたくなった。

第4章 ヤショダラ

城にもどったシッダルタは、病気になった。6か月と6日のあいだ、生と死の間をさまよう。その頃から、シッダルタの心の中にある決心がかたまってきた。
スッドーダナ王と王妃はシッダルタをヤショダラ姫と結婚させようとする。
シッダルタは、むこ選びの儀式で申し込みのあった者と戦って勝ったら結婚すると宣言。バンダカが名乗りをあげた。

第5章 ミゲーラ

シッダルタを愛するミゲーラは、男装して技くらべに名乗りをあげた。武芸競技が始まり、鳥に乗りうつったタッタは、ミゲーラを勝つように仕向ける。
しかしミゲーラが女であるとわかり、スッドーダナ王はミゲーラを殺そうとした。シッダルタはヤショダラ姫と結婚するかわりに、ミゲーラを許してやってほしいという。王はミゲーラを許すが、目をつぶした。

第6章 四門出遊

シッダルタとヤショダラ姫は結婚した。コーサラ国のパセーナディ大王は、シッダルタの身内の王女を妃によこせといってきた。パセーナディ大王は王としての品位にかけていた。そこで隣国のシャカ族から王族の娘をひっぱってきて妃にしようと思ったのだった。
シッダルタのもとへ謎のバラモンが現われて、砦の廃墟につれていく。東の門をくぐると年寄りがいた。南の門をくぐると病人がいた。西の門をくぐると死人がいた。北の門をくぐるとバラモンがいた。バラモンは、シッダルタに「あなたが選ぶ道はそれしかないのじゃ」という。
スッドーダナ王は侍女のひとりを王女にしたててコーサラ国へ嫁入りさせる。1年たって王子が生まれ、ビドーダバと名付けられた。

第7章 ラーフラ

タッタはデーパを捕らえた。デーパはミゲーラが目を焼いてごらんというと、みずから目を焼く。デーパはナラダッタの弟子だった。
その年の夏、カピラヴァストゥ一帯は猛烈なモンスーンにおそわれ、疫病と飢饉によって何千人も死んだ。謎のバラモンは「さあ立ちなされ王子よ!」という。
シッダルタは人々を救う道を求めて断食をはじめた。

第8章 五人の行者

バンダカは、シッダルタの苦行をやめさせるために5人の行者をつれてきた。
行者は法術でシッダルタをやぐらからおろすことに失敗するが、シッダルタと問答して「あなたは もしかしたらほんとに世の中を救うおかたかもしれません どうかわれわれといっしょに苦行林へおいでくだされ」という。
シッダルタは立ち上がってやぐらを降り、城から出ていこうとした。バンダカがヤショダラの腕をとる。シッダルタは駆けもどると、ヤショダラ姫をバンダカから救うために、素手でバンダカの剣を奪いとった。そのときヤショダラが倒れた。

第9章 旅立ちの朝

シッダルタの子は生まれようとしていた。
バンダカはスッドーダナ王に、国をゆずれと迫る。
子どもが生まれて7日目の朝、シッダルタはひそかに城をぬけだした。

第10章 バンダカの死

シッダルタが城を出てまもなく、またコーサラ国のいやがらせが始まった。
コーサラ国に対抗するため、スッドーダナ王はやむなくバンダカに国をゆずった。王となったバンダカはヤショダラにいいよるが、拒否される。バンダカは、侍女のひとりを妃にして、生まれた子にダイバダッタと名付けるよう命じた。
出陣したバンダカは敵の矢に射られて死ぬが、コーサラ国は侵略をやめた。
1年たった。バンダカの子ダイバダッタはちからの強い子になっていた。

【第3部】
第1章 苦行

マガダ国をめざすシッダルタは、デーパと出会い、猟師の子アッサジを連れていくはめになった。その前に、タッタとタッタの妻になったミゲーラが現れた。

第2章 弱肉強食

ダイバダッタは、こども同士で遠足に行き、穴に落ちたとき、ほかの子を殺して荒野に捨てられた。オオカミに助けられたダイバダッタは、ナラダッタと出会う。

第3章 老婆と浮浪児

ナラダッタはダイバダッタに、人間の世界へもどりなさいという。ダイバダッタはワナにかかって捕らえられ、見世物にされるが、逃げ出して老婆にかくまわれた。

第4章 騎士スカンダ(1)
シッダルタとデーパは、熱病にかかったアッサジを連れてバンダワの町にやってくる。シッダルタはうみを吸い取ってアッサジの病気を治した。

第4章 騎士スカンダ(2)
町の長者の娘ヴィサーカーは、シッダルタを誘惑するが、シッダルタは心を動かさなかった。そこへタッタが強盗団を引き連れてやってくると、町を焼き払い、ヴィサーカーを人質にとる。シッダルタは10年たったら国へ戻ることを約束し、タッタに盗賊をやめさせた。ヴィサーカーの心を知ったスカンダは自殺した。
第5章 バンダブ山の会見
死の世界の入り口から戻ったアッサジは、予知能力を身につけていた。
アッサジは20年後にビンビサーラ王が息子に殺されることを予言する。
ビンビサーラ王は、バンダブ山で修行中のシッダルタに会い、友人となった。


第6章 苦行林にて
シッダルタはデーパに誘われてウルベーラの苦行林にいった。河でからだを洗っているシッダルタの前にスジャータが現れ、毒虫や蚊にさされない薬を渡す。
苦行が始まった。タッタがやってきて食べ物をさしだすが、シッダルタは断る。ミゲーラはからだじゅうにできものができて苦しんでいた。
スジャータは2カ月も断食したシッダルタの姿を見て驚き、こっそり物置へ連れて行って牛乳とごはんをまぜたスープを飲ませる。
苦行林の修行者たちはタッタを捕らえ、丘の上の家に火をかけようとしていた。シッダルタはタッタを逃がし、タッタは火の中からミゲーラを救い出した。
シッダルタは林の中にひそんでいるタッタをたずねて、ミゲーラの姿を見た。アッサジはシッダルタに、ミゲーラを治す方法を教える。それは傷口から毒を吸い出すことだった。シッダルタはミゲーラの体からうみを吸い出す。

第7章 懲罰
デーパは、シッダルタがミゲーラのうみを吸い取っているのを見て、懲罰会議にかけ、地中に埋めた。
シッダルタを救い出したのはアッサジだった。
命びろいしたシッダルタは、苦行をやめ、アッサジといっしょに修行する。

第8章 アッサジの死
6年の歳月が流れた。アッサジが自ら予言した死の日がやってきた。
シッダルタはアッサジを木にしばりつけるが、ネズミが縄を切り、アッサジはオオカミの子が飢えているのを見て、みずから進んでオオカミに身を引き裂かれてしまう。

第9章 スジャータ
シッダルタの受けた衝撃は大きかった。シッダルタは我が身を火に投じたり、イバラの林に入ったりしたあげく、墓場でカラスにからだをつつかせる。
スジャータはシッダルタに愛を告白するが、拒絶されると、ジャングルに入ってコブラに咬まれてしまった。
シッダルタはスジャータの中に入り、ブラフマンと再会する。
ブラフマンに宇宙の姿を見せられたシッダルタは、生命のかけらを持ち帰ってスジャータを生き返らせた。

第10章 ルリ王子
森へ入ったシッダルタは、大木の下で鳥や虫や草たちに自分の体験したことを語って聞かせた。そこへデーパがやってきて、カピラヴァストウの城がコーサラ国に攻められて降伏したことを知らせる。
パセーナディ王は、シャカ族から嫁いできた妃が、実は侍女の身分だったことを知ってしまったのだった。
ルリ王子は、カピラヴァストウへ留学して自分の母が奴隷だったことを知り、国へ帰って母を殺そうとするが、父に止められて母を奴隷部屋へ入れた。

第11章 ヤタラの物語(1)
父がつくった薬を飲んで大きくなったヤタラは、森の奥でとらえたルリ王子が、自分にもスードラの血が流れているというのを聞いて解放し、家来となった。

第11章 ヤタラの物語(2)
父がつくった薬を飲んで大きくなったヤタラは、森の奥でとらえたルリ王子が、自分にもスードラの血が流れているというのを聞いて解放し、家来となった。
ヤタラはルリ王子の母に心をひかれるが、奴隷部屋で疫病が流行したため、ルリ王子は奴隷小屋を焼き払うよう命じた。ヤタラは小屋に飛び込んで王子の母を助け出すが、間もなく母は死んだ。
ヤタラはシッダルタのもとへやってきた。シッダルタは「人間もこの自然の中にあるからには、ちゃんと意味があって生きてるのだ、あらゆるものとつながりを持って……そのつながりの中でおまえは大事な役目をしているのだよ」と説く。
シッダルタは、ヤタラに教えたことが自分自身に教えたことに気づき、命のかぎりこの宇宙の中の自分の使命を果たすことを宣言する。ブラフマンが現れ、その悟りを人々に教えつづけるよう語り、そのしるしとして額に聖なるしるしを与えた。

【第4部】
第1章 剣士と風来坊
ダイバダッタはマガダ王国へやってきた。ダイバダッタは、スジのいい剣士を見つけて育て、王様に推薦し、ついでに家来になろうと考え、タッタにふたりで組むことを提案。マガダ国の王に仕えてコーサラ国に復讐しようと考えたタッタは、その提案にのった。
タッタは近衛兵に採用され、アジャセ王子を魔ゾウから救った。
ダイバダッタはミゲーラからシッダルタの話を聞き、シッダルタに会いに行く。

第2章 決闘者
ダイバダッタはアジャセ王子の遊び相手となった。
コーサラ国から領土問題を勇士の決闘によって解決しようと申し入れてくる。マガダ国ではタッタが選ばれた。
コーサラ国からはヤタラがやってきた。ふたりはシッダルタについて語り合う。
タッタとヤタラの決闘がはじまった。

第3章 対決
ふたりの闘いは、翌日に持ち越された。
ダイバダッタはひそかに毒矢を射てヤタラを倒すが、タッタはこれは陰謀だと叫んでとどめをささない。
ビンビサーラ王は試合を中止させた。

第4章 危難
ヤタラを倒したのはトリカブトの毒であることが発覚した。ダイバダッタは一生ものがいえなくなる薬を買い、ミゲーラに飲ませた。そして犯人はミゲーラだといって逮捕させる。

ダイバダッタに教えられて、タッタは山越えの近道を通ってミゲーラをとりもどすと、シッダルタのいる苦行林をめざした。
ダイバダッタは、シッダルタの本性をたしかめようとして、かげからようすを見る。シッダルタはミゲーラの心の中に入って声が出せるようにした。ダイバダッタはそれを見て、弟子入りを申し出る。

第5章 鹿野苑
ブッダのもとへ一頭のシカがやってきて、連れ出そうとする。
ついていくと動物たちが集まっていて、河が洪水になっていた。シカはブッダを案内する。
ブッダはさらに10日を歩きつづけ、ベナレスの町に近いサールナートというところにたどりついた。そこは野性鹿の楽園であった。
そこにはデーパたちがいた。ブッダはデーパたちに教えを説きにきたというが、デーパたちは相手にしない。ブッダは鹿を最初の弟子として教えを説き始めた。

第6章 牡牛セブーの物語
デーパたちは鹿が何十頭も集まってブッダの話を聞いているのを見て妖術だと思うが、いつしか苦行者たちもブッダの話を聞きに行くようになった。
——インドの山奥にセブーという名の牛がいた。セブーは大自然の神に、人間になりたいと訴える。セブーは人間になり、人間の手と足と顔と目と声を授けられるが、これらを別の人にゆずろうと思うと、牛にもどるといわれる。
セブーは暴れ牛に襲われていた大尽の娘を助け、大尽の家に住むことになった。やがて大尽はセブーを養子にして自分の娘と結婚させることに決めた。
ところがセブーは森で子鹿が足を折っているのを見て、自分の足を子鹿に与えてしまう。また、小鳥がヘビに卵を狙われているのを見て、自分の手を小鳥に与えてしまう。さらに、ものが言えず目も見えないために牛どろぼうと疑われていた男を助けるために、声と目と顔を男に与える。セブーは牛にもどり、刀や弓矢で痛めつけられて倒れてしまった。
息をひきとろうとするセブーに美しい天上の音楽が聞こえてきた。そしてセブーが息をひきとったとき、セブーのからだは光につつまれ、大きな羽がはえて、天上にのぼっていった。
3人の修行者は、ブッダに話をつづけてくれとたのむ。ブッダは八正道を説いた。
その時、子鹿がアリの巣に落ちた。ブッダはそれを助けに行く。デーパはアリの巣に石を投げ込んだ。ブッダはアリに襲われ、意識を失って森の奥へ運ばれた。鹿たちはブッダと子鹿のからだをすみずみまでなめつづけた。
ブッダの教えを正しいと思いはじめた3人と別れて、デーパともう一人はもっと南側の修行場に行こうとするが、コーサラ国の兵士に矢で射られてしまった。

第7章 愚者が行く
その年のくれ、コーサラ国はいきなりマガダ国の北の領地の国ざかいに軍隊を送りこんだ。国際試合の裏切りと、そのあと使者の一行をおそわれたことへの仕返しだった。タッタは戦場をかけめぐって将軍をとらえ、ルリ王子が木曜日には寝所にいることを聞き出す。
ルリ王子が進んでいくと、鹿の群れのまん中にブッダがいた。ルリ王子がひざまずけと言っても、ブッダは動かない。ゾウでふみつぶそうとすればゾウがふるえてしまい、矢で射るとその前に鹿が飛び出して身代わりとなった。ルリ王子ははじめて恐怖をおぼえた。捨て身になった動物の気迫にうちのめされたからだった。
ルリ王子はひそかにテントを出てブッダのところへ向かった。ブッダはデーパが矢を受けて倒れているのを見て、自分の血をデーパに輸血する。ルリ王子はブッダに起きろというが、ブッダは輸血をやめない。
ルリ王子がブッダに斬り掛かろうとした時、タッタが飛び出した。ブッダはタッタに向かって殺してはいけないという。
王子は屈辱に打ちひしがれて帰り、デーパは生き返った。

[ブッダ外伝(1) ルンチャイと野ブタの物語]
ブッダ外伝。
むかし、インドのシッキムという国に、ルンチャイというぐうたらでうそつきの子どもがいた。
ある日学校に遅れた言い訳をするのに、母親が死んだと嘘をつく。そのために母親が黒服の男達に連れ去れてしまう。あわてたルンチャイは黒服達の後を追う。
ガンガ・ブンガと呼ばれる火炎木の助けを借りたり、煮えたぎるドロの川を軽石に乗って渡るなどして、ついに母親が連れ去られたというマーラの城にたどりつく。
マーラによって母親は野ぶたの姿に変えられていた。母親を人間に戻すために、ルンチャイが身代わりとなってブタに生まれ変わる。
ブタは生き返った母親のもとで飼われることになった。
母親の家に訪れた修行僧が、ブタがルンチャイの生まれ変わりであることを告げる。ブタは長生きしたすえに静かに死んで行く。同じ日、母親に新しい赤ん坊が生まれる。その赤ん坊にはルンチャイと名付けられた。

第5部
第1章 アナンダ登場
パセーナディ大王がカピラヴァストウを攻めた年、生まれたばかりのアナンダを悪魔が助けた。アナンダは不死身になり、全身に毒矢をあびても死なない。
しかし、パンパス刑事は、1週間でアナンダをあの世へ送ってみせるといった。

第2章 パンパス刑事
パンパスは犬を訓練して、一瞬でアナンダをバラバラにしてしまおうと考えていた。宝石商の屋敷から逃げ出したアナンダを追ったパンパスは、犬をけしかけるが、アナンダの目を見た犬たちは逃げてしまう。パンパスが剣をかざすと、剣に雷が落ちた。

アナンダが自分を救ってくれた存在に説明を求めると、マーラが現れ、ブッダと対決させるために助けているのだといった。

第3章 リータ
アナンダは商人を殺して金を奪ったが、商人の連れていた娘がアナンダのあとをついてきた。娘は口がきけなかったが、名前を聞くと矢車草(リータ)を指差す。アナンダはリータを愛するようになる。
そこへアヒンサーが現れ、金30袋の仕事があるといってさそう。リータがパンパスにとらえられ、助けようとしたアナンダは底なし沼に落ちた。マーラは助けてやるかわりにリータと手を切れというが、アナンダはリータに結婚しようといった。

第4章 アングリマーラ
アナンダとアヒンサーは金30袋を運ぶ一行を襲ったが、アナンダのニラミはきかなくなっていた。二人はいったんひきあげる。
アヒンサーは貴族の息子だったが、バラモンの妻に誘惑され断る。妻はアヒンサーが悪口をいっていると告げ口をした。アヒンサーはバラモンに催眠術をかけられ、小指を100本集めよと命じられた。アヒンサーは毎晩小指を切り取って歩いたが、100人目を殺そうとしたところ自分の母親だった。
アヒンサーはバラモンをにくみ、それ以来坊主からしかものを奪わなくなった。
アヒンサーはアナンダが魔力を失ったのはリータを好きになったからだと指摘し、リータを追い払う。リータは行ってしまった。
アナンダとアヒンサーは馬の足跡をたどってカッサパの本殿にやってきた。

第5章 拝火殿
ウルヴェーラ・カッサパは、アナンダとアヒンサーを拝火殿に誘い込み、火をつける。マーラが現れるが、そのときリータに案内されてブッダがやってきた。ブッダは拝火殿の中へ入り、マーラにいつでもやってこいと呼びかける。
悪魔は正体を現し、地獄の炎をあびせかけるが、ブッダは平然としていた。悪魔がブッダにかみつこうとすると、すさまじい光にはねとばされた。

第6章 カッサパの帰依
悪魔は捨て台詞を残して去り、ブッダはアナンダを死の世界からひきもどした。
カッサパはブッダの法術の腕をためそうとする。アナンダのつけた火が燃え広がり、カッサパがブッダに助けを求めると、火の熱がはげしい上昇気流を起こし、雲を呼んで土砂降りとなった。
アナンダが弟子入りを希望し、リータの声が出るようになった。カッサパはブッダの弟子になり、500人の弟子たちもつづいた。

第7章 ワニの河(1)
カッサパの弟ナディーとガヤーは、ブッダをワニのえじきにしようと相談する。
リータはアナンダのために薬草をとりにいき、ワニに取り囲まれた。ブッダが川に入ると、ワニはブッダについていき、リータは無事もどってきた。
アヒンサーはブッダを捕らえ、目をつぶそうとするが、アナンダがブッダを助けに飛び出した。ブッダはアヒンサーが指を切りたいというと「では切るがよい」と手を差し出した。アヒンサーはブッダの手に迫られて、叫びながら逃げていった。
ブッダはワニの背に乗ってナディーとガヤーのところへやってきた。ナディーはブッダを招くが、じつはブッダに恥をかかせるつもりだった。

第7章 ワニの河(2)
カッサパの弟ナディーとガヤーは、ブッダをワニのえじきにしようと相談する。
リータはアナンダのために薬草をとりにいき、ワニに取り囲まれた。ブッダが川に入ると、ワニはブッダについていき、リータは無事もどってきた。
アヒンサーはブッダを捕らえ、目をつぶそうとするが、アナンダがブッダを助けに飛び出した。ブッダはアヒンサーが指を切りたいというと「では切るがよい」と手を差し出した。アヒンサーはブッダの手に迫られて、叫びながら逃げていった。
ブッダはワニの背に乗ってナディーとガヤーのところへやってきた。ナディーはブッダを招くが、じつはブッダに恥をかかせるつもりだった。

第8章 象頭山の教え
ナディーが火についてしゃべらなければならないというと、ブッダは話しはじめた。ブッダはカモの話と町の話をする。
ガヤーとナディーも弟子になった。

第9章 竹林精舎
ビンビサーラ王のもとへブッダがやってきた。アジャセは父がブッダの在家の弟子となったと聞いて、無気力だと非難した。王はアジャセを遠ざけ、アジャセはダイバダッタに相談した。
ダイバダッタは、組織をつくることを提案し、教団をとりしきろうとする。
マガダ王国の都の北に平原があった。ビンビサーラ王はここをブッダに捧げた
ここは竹林精舎と呼ばれて、ブッダの大きな根拠地になった。
アジャセはブッダを殺害しようとして矢を射た。怒ったビンビサーラ王は、アジャセを塔に幽閉する。

第10章 幽閉の王子
乾期になり、王子を幽閉する塔は、煙突の中のような死の室となった。牢番は、塔の下の日かげにこっそり王子を連れていく。
王子はそこで奴隷の娘ユーデリカを見初めた。
王子はふたりで脱出する計画を練るが、ユーデリカは死刑になった。
ダイバダッタは死刑を命じたのは王だと告げる。王子は復讐を誓った。

ブッダ外伝 タカとシビ王のはなし
むかしある国にシビ王という大そうなさけぶかく、国民もよくしたって立派な政治をしていた王さまがいた。
天上では帝釈天とビシャモン天がシビ王のうわさを聞きつけ、どんなになさけぶかいか試してみることにした。
タカに追われたハトをかくまったシビ王は、ハトを助けるために、ハトの重さと同じだけの自らの肉をタカにやることにしたが・・・。

ブッダ外伝 寒苦鳥のはなし
厳しい冬の寒さに震える鳥の夫婦がいた。
春になったらりっぱな巣をつくることを誓い合うが、実際に春が訪れ暖かくなったとたんに・・・。

第6部】
第1章 サーリプッタとモッガラーナ
ブッダはアナンダに未来の見える人を連れてきてくれといった。アナンダはブッダの着ていた衣をまとって行くが、どこへ行っても扉を閉ざされ、ものを投げられ、袋だたきにあった。
アナンダは道ですれちがったサーリプッタからブッダの教えについて問われる
アナンダからブッダが因果について説いていると聞いたサーリプッタは「私はそのかたのお話がぜひ聞きたい」という。
未来を読むちからをもつモッガラーナは、サーリプッタを迎えに行き、アナンダを見て、すべてを言い当てた。サーリプッタとモッガラーナは、師サンジャヤを捨ててブッダのもとへ行くことにする。他の弟子たちも従った。
アナンダがブッダのもとへ案内する弟子の数は250人。それはアナンダが殺した人間の数だった。モッガラーナはアナンダの未来を予言して「あなたはブッダの手足になる人だ」という。
ブッダはアナンダがもどってくることを知り、弟子たちに出迎えさせた。ブッダは「あなたがたを待っておった……ずっと以前から」といい、ふたりを菩提樹の下へ案内させる。そこはブッダの寝起きする場所だった。

第2章 非難する群れ
ブッダはサーリプッタとモッガラーナを上座にすえた。ダイバダッタはブッダに後継者は自分こそふさわしいというが、ブッダは「おまえなどに教団をゆずる気はない」と叱りつけ、ダイバダッタを追い払った。
サンジャヤにたのまれたチンチャという女が、おなかの中にブッダの子がいるといい、ラージギルの町々にはブッダを非難するうわさが流れだした。
アナンダのもとにマーラが現われ、リータと結ばせてやるからブッダを捨てよと迫るが、アナンダはブッダを選ぶ。リータはコブラに咬まれて死んだ。
ブラフマンはブッダに「約束をはたしていない」という。ブッダは反省した。

第3章 死の沼地
ブッダはアナンダだけを連れて北へ旅を進め、20年前にデーパと通った沼地を通ってパンダワの町につく。
昔ブッダを誘惑したヴィサーカーは狂っていた。

第4章 狂女ヴィサーカー
ブッダはヴィサーカーの部屋で幻覚剤を見つけて薬をかくし、ヴィサーカーを町から連れ出した。
途中で、アナンダはヴィサーカーが死んだと見て置いていこうとするが、ブッダは引き返す。
そのとき回復したヴィサーカーが走ってきた。

第5章 ルリ王子との再会
アヒンサーはブッダを矢で射るが、アナンダと闘って穴に落ちた。
死に瀕したアヒンサーは、ブッダの話を聞いて弟子になりたいといった。ブッダに「いいとも 生まれ変わってやってきなさい」といわれ、アヒンサーは死んだ。
ルリ王子はブッダに、こき使われているシャカ族と、囚われのスッドーダナ王を見せる。ブッダはルリ王子に「あなたはあわれな人だ」といった。
シャカ族の取り締まりをしているバッディヤが、ブッダに集会所で話をしてほしいという。ブッダは説法を始めた。

第6章 意志と意志
ラーフラはブッダのもとに駆け寄り名乗りをあげる。
シャカ族の青年が蜂起を訴えたのに対し、ブッダはそれをいさめ、ルリ王子のほうが苦しんでいるという。
ルリ王子はブッダを呼びつけ「どうやったら苦しみからぬけだせるか教えろ」といった。ルリ王子とブッダは5時間も話し合ったが、ルリ王子は「おれの苦しみは、そんな説教じゃぬぐいとれない」という。

第7章 解放の日
ブッダはルリ王子と何日も何日も意見を戦わせた。
12日めの夜、ルリ王子はついにシャカ族の解放を決めた。
ルリ王子はブッダを自分の国へ招く。

第8章 ダイバダッタの陰謀
17歳になったアジャセ王子のもとへダイバダッタがやってきた。
ダイバダッタはアジャセを王にする交換条件として竹林精舎の指導者になることを望み、アジャセ王の命令書を持って竹林精舎にやってきた。サーリプッタは教団全員を集合させて、何人がダイバダッタに従うかたしかめようといった。
ダイバダッタに従ったのは4分の1しかいなかった。ダイバダッタはコーサラ国への復讐をさせるといってタッタを誘う。ダイバダッタの一行は象頭山に向かった。
王となったアジャセは、父王を北の塔へ入れる。
タッタはカピラヴァストウまでブッダに会いにいくことにした。
サーリプッタは自然現象を利用して象頭山のサモンたちをつれもどした。

第9章 ナラダッタ
コーサラ国へむかっていたブッダは、ナラダッタの話を聞いて会いに行く。
ナラダッタはブッダにクモの巣を指差し、ブッダはナラダッタの気持ちを理解した。
夜明け近く、ブッダがすこしまどろんだとき「アシタさま……私は……許されるのでしょうか」とナラダッタが声を出した。そのとき、洞窟の中いっぱいに、かぐわしいにおいと光がみち、ナラダッタの肉体は七色のもやにつつまれ光り輝いた。
ナラダッタが「まだ私の役目は残っております」というと、声はいった。「おまえはその人を見つけたのだ。おまえの前にいる人がその人だ」。
ブッダは生涯を自然にゆだねて終わることが、いかに感動的なものかを知った。
その日から、ブッダは自分の生涯の終わりの日のことを深く考えるようになった。

第10章 祇園精舎
コーサラ国の長者スダッタが、ルリ王子の息子ジェータ王子に庭園をゆずってほしいといった。
王子は「ほしいなら、園いっぱいに金貨をしきつめよ」という。
ルリ王子はパセーナディ王から、シャカ族をねだやしにしなければ王位をゆずらぬといわれ、カピラヴァストウへ出陣した。
スダッタは4年前ブッダに会い、ブッダのために地上最高の僧園を提供しようと決めた。
スダッタはジェータ王子の園に金貨をしきつめるために、邸も奴隷も全部売ると、自分はスラム街に住んでこじきをして金をためる。
王子は「おまえに負けた。荘園はタダでゆずってやるぞ」という。

第11章 陥穽(おとしあな)(1)
カピラヴァストウへ向かったルリ王子は、ブッダにとめられて兵を引きあげた
もどってきた王子をパセーナディ王は叱り、お気に入りのレスラーを養子にして王位をつがせようとした。これを知ったルリ王子は王を捕らえ、自分が王となった。ルリ王はブッダを迎え、「生涯帰依つかまつる」と宣言した。
スダッタとジェータ王子のコンビは大僧院をつくりあげた。
ポッカラサティにそそのかされた女弟子がブッダを招く。そのとき、ものかげにかくれていたポッカラサティが女を殺し、ブッダが殺したと叫んだ。

第11章 陥穽(おとしあな)(2)
ブッダはルリ王の父が幽閉されているところへいき、文字を書き残していった。
「左の壁の下を見よ あなたの味方がいる」と。そこには雑草がはえていた。
カピラヴァストウ城にやってきたタッタは、コーサラ国に殺された人たちの墓を見て怒りに燃えていた。騎士ベーランダがコーサラ国を憎んでいるグループのメンバーをタッタに引き合わせる。彼らが決起すると聞いて、タッタは張りきった。

第12章 シャカ族の滅亡
ポッカラサティが女を殺した犯人であることが判明し、ルリ王は部下に追わせる。ところがその部下がタッタと遭遇し、誤って殺されてしまった。ルリ王は追っ手を殺したのがシャカ族であると知って、一個大隊でせん滅に向かわせた。
カピラヴァストウでは血の気の多い者が集まってコーサラにいくさをしかけようとし、平和をのぞむ者は国を追われた。ヤショダラたちはコーサラ国へ逃げてく るが、ブッダの話を聞いて、王がみんなで国にもどろうとしたとき、戦争が始まってしまったとの報告が届いた。そのきっかけがタッタだったと聞いて、ブッダ は衝撃をうける。ブッダはルリ王に「もうおひきとめはいたしません」といった。
タッタはルリ王のゾウに踏み殺され、コーサラ軍はカピラヴァストウ城へ攻め込んだ。シャカ族は全滅した。夜明けにカピラヴァストウへ着いて、タッタの死骸を見つけたブッダは「おまえには私の教えが通じなかったのか」と激しく嘆く。

【第7部】
第1章 悲報
カピラヴァストウ全滅の報せを聞いて、もっともはげしく悲嘆にくれたのはブッダであった。ブッダは、タッタやシャカ族の人々に自分の教えが結局なんの救いにもならなかったことに、はげしくうちひしがれていた。
アナンダの背後にマーラが忍び寄り、ブッダを捨てて自分といこうと誘う。しかし、アナンダはブッダのもとへいき「あなたはけっしてむだだったのではありません!」という。「私という極悪人の人殺しが救われたんですよ!!」と。
マーラは「私のことばが聞こえないのか」というが、アナンダは「だまれ 消え失せろっ 悪魔!!」と叫ぶ。マーラは小さなヘビの姿になって消えた。
アナンダのことばがブッダにちからをよみがえらせた。アナンダは、なぜタッタがブッダを追いかけて竹林精舎からやってきたのかといぶかる。
ルリ王は牢獄に父をたずね、牢獄から出すかわりに隠居せよと迫る。パセーナディ王が聞くはずもない。ルリ王子が去ると、パセーナディ王はブッダにいわれたことを思い出し、壁の下にある雑草を見ると、「けなげなものよ わしも……見ならうか……」とつぶやいた。
1年たったある日、竹林精舎からデーパがやってくると一大事を告げた。ビンビサーラ王がアジャセ王子に幽閉されたこと、アジャセが王位につき、ダイバダッタは王から大金をもらって勢力をのばした。教団の者たちは動揺しており、このままでは教団は破滅してしまうという。
ブッダはデーパに、「これをのりこえることがまことの試練だ」とサーリプッタに伝えよといって先に出発させた。ブッダはアナンダとふたりだけで出発した。ルリ王子に父を解放するようにといいおいて。
パセーナディ王は扉が開いているのに気づき、牢を出てマガダ王国をめざした。城門の前で名乗りをあげるが、門衛は相手にしない。翌朝、老人のなきがらが城門の前にころがっていた。門衛はその老人を共同墓地へ運んでいった。

第2章 ダイバダッタ
ブッダとアナンダはマガダ王国についた。アジャセはブッダにビンビサーラ王への面会を禁じ、ダイバダッタが竹林精舎の指導者になったという。
ダイバダッタは、ブッダが選ばれた人間であると証明するために、安全なほうの盃を選べという。ダイバダッタはふたつとも毒を入れるように指示してあったが、ブッダは平然としていた。ダイバダッタの部下が毒を入れなかったのだった。
ダイバダッタはブッダを竹林精舎へ誘い、途中で大石を落とすが、石は砕けてしまう。毒矢で狂ったゾウにブッダを襲わせると、ブッダはゾウの心の中に入って 毒矢を抜かせた。ダイバダッタは自分の爪に毒をぬってブッダを殺そうとするが、転んだため自分のからだを傷つけて死んでいった。

第3章 アジャセ王の微笑
大公妃はからだに蜜をぬってビンビサーラ王になめさせていた。
アジャセ王はダイバダッタが死んだと聞いて部屋に閉じこもる。額に大きな膿腫ができて、痛みに苦しんでいるのだった。
ブッダはビンビサーラ王が幽閉されている塔にやってきた。そのとき王の容態が急変し、ブッダは王のもとへ駆けつけた。王はアジャセを弟子にして救ってやってほしいと頼んで死ぬ。ブッダは城へもどり、アジャセ王の額に人差し指をあてた。それから毎日12時間アジャセの額に指をあてつづけた。しかも3年間。
3年目、ブッダが「では明日」といって去ろうとすると、アジャセが微笑んだ。
ブッダは「あの微笑みは……まるで……神のようだった」と思う。
その瞬間、ブッダは悟った。ブッダは喜びのあまり走りつづけさけびつづけた。
そして近くの山の頂きに登り天にむかってなおもさけんだ。
ブッダは霊鷲山に台座をつくらせ、ときには瞑想にふけり、ときには人々に教えを説いた。その話はいままでの弟子たちへ説く教えとはまったくちがっていた。 僧たちへのきびしい戒律やいましめのことばではなく、どちらかというと一般の人むきで深い人生の味わいがあった。だからどんな身分の人間にもよくわかっ た。
アジャセ王がやってきてブッダの話を聞くと、泣きながら、宰相に前王の盛大な国葬の準備を命じ「ブッダよ、予は生あるかぎりあなたの弟子だ……」といった。

第4章 旅の終わり
ブッダは新しいさとりを得てからは、自分の死の予感をますます強めていた。そこへ、旅先でサーリプッタとモッガラーナが死んだとの知らせが届いた。モッガラーナの荷物の中にはブッダにあてた手紙があった。そこにはブッダの命があと10年4か月しかないと記されていた。ブッダは涙を流して悲しんだ。
その夜、ブッダははげしい腹痛を起こしてのたうちまわった。悪魔が「おまえはもう充分生きた。死ね」というが、ブッダはそれをしりぞけた。
ブッダまた旅に出た。出発のとき、ブッダはデーパに「さらばだ 友よ」といい、アナンダに「世界は美しい」と語りかけた。
ブッダは500人の弟子とともに長い旅をして、貴族から貧者まで何万人にも教えを説いた。しかしブッダの心の中はそれでもまだ満たされなかった。
ブッダはチュンダという鍛冶屋の家に泊まった。チュンダの妻はヒョウタンツギを料理して出した。ブッダはそれにあたってはげしい下痢におそわれた。木の下で横になったブッダのもとへブラフマンが現われた。
沙羅双樹の花が咲いた。「さあ ぼつぼつ出かけますかな」とブラフマンがいった。ブッダはブラフマンに問いかけた。
「私が去ったあと……私の一生かけて説いた話は……どうなるのですか!! 百年たち千年たったあと 忘れられてしまうのですか!!」
ブラフマンは「それを見せて進ぜよう」といって、ブッダの手をひいて歩きだした。
ブッダは息をひきとった。
開始:2014年5月26日